追われる人


彼は早く大人になりたかった。
同じ年の子たちが幼く見え、毎日が憂鬱だった。
特にかけっこや競争など何かにつけて走るのが嫌いだ。
自然と教室で本を読むことや勉強をすることが多くなった。
周りの子どもからはガリ勉とからかわれることもあったが、些細な雑音だ。

少年は青年になり、多少の青春を謳歌する。
今思えばそれは一生に値するものなのだろう。
受験戦争を通り抜け、就職活動にすり減り、社会に出た彼はそう思う。
夜の窓に映る自分の顔をぼんやりと眺める。
繰り返し繰り返しの終わりがない毎日。
いつからだろうか、自分の本心が見えなくなったのは。

「思い切り走りてぇな・・・・・・」

そう呟いた時、彼はあの頃から自分を偽っていたことを悟った。
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